日本がアニメを求めてFlashへ
ウェブのFlashアニメーション番組は新しい世界を開き、PCと夢だけしか持たないアマチュアのアニメータによりよい関係をもたらしている。(タシロ ヒロコ)
日本の数十億ドル規模のアニメ産業はひとにぎりの大手プロダクション企業によって支配されていた。この数十年、セルロイドに手書きやCGの画像を載せ高速表示させてアニメ動画という錯覚を見せるには、込み入っていて高くつく作業が必要だった。もしもあなたがフリーのアニメータだったなら、信託基金か大手プロダクションをバックに持たなければならず、そうでなければ割り込める勝算は無い状態だった。
しかし、日本はいま、アマチュアのアニメータがアニメのスタジオシステム全体を刷新しているような国となっている。野心的なアニメータにデスクトップPCとそれなりのサーバ能力、そしてAdobe Flash(やMacromedia Flash、Shockwave Playerのプログラム)などのマルチメディアのソフトについての実用に堪える知識がともなえば、すぐさま世界の視聴者に見てもらえるプロ仕様のアニメーションが作り上げられる。
日本では、この5年ちょっとで、Flashのウェブ関連ソフトが浸透し、手ごろで高速なプロードバンドが普及したこともあり、数人のこのような低予算の「Flashアニメータ」がTVやDVD商品に進出した。
・使いこなすのは難しくない
「これまで個人のクリエイターには一般の人びとに自分の作品を見てもらいたくても方法はほとんど無かった。でも、Flashとブロードバンド接続によって、クリエイターはアニメーションをそれまでとは違ったやり方で市場に送り出すことができるようになった」と左山誠氏は言う。左山氏は2005年に大阪でJAWACONを開催し自主制作クリエイターにビジネスの機会を提供したアニメのクリエイターだ。
(訳注:左山誠氏とはrumparo-titaのルンパロ氏のことです)
1990年代の中頃に現れたこうしたFlashソフトのほとんどは元々は動画やインタラクティブな画像によってウェブページを彩るために用意されたものだった。(昨年末にMacromediaとの合併に決着をつけた)AdobeによるFlashソフトウェア群はほどんどのウェブ・ブラウザにとって標準的なアプリケーションであり、ビデオ動画をウェブページの他のものと一体化させるためにも使うことができる。携帯電話やほかのデジタル製品に使用できるFlashソフトも存在する。
Flashによって、アニメータは映像を制作し、それを加減することで、速く安くアニメ動画を作り上げることができる。ソフトそのものを使いこなせるようになるのはそれほど難しいことではない。このソフトの技術とブロードバンドの到来は小野亮氏など日本のFlashアニメータらに巨大な恩恵をもたらしてきた。
(訳注:小野亮氏とは蛙男商会のFrogman氏のことです)
・芥子粒のために働いて
小野氏は現在35歳。十年以上東京のテレビドラマや映画プロダクションで働いて、テレビ局や大手プロダクション企業、大手映画配給会社の中で、アニメータが受け取るちっぽけな金額に不満を持っていた。アニメータはほとんどのプロダクション・スタジオで月に856ドルしか稼げない、と小野氏は言う。
(訳注:2007年4月3日現在$1=118円。$856=101,008円=約10万円)
「クリエイターとディレクターはほとんど報酬を得られない」と小野氏は言う。「彼らはアイディアとノウハウを提供するけれど、その仕事に著作権の権利を持てないんだ」
小野氏はアニメ映画の監督になる夢は大ばくちになるだろうと思って東京を離れて、生活費が比較的低い島根県へと移り、二年後にはパソコンでFlashソフトを使ってアニメを制作していた。脚本も書いたし声もあてた。
・スピード販売
小野氏は最初のアニメ「菅井君と家族石」を2004年に自分のウェブページで公開した。タイトルはアメリカのファンク・ロックのバンド「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」からもじった。島根に住む黒人の家族についての話だ。二ヶ月のうちにサイトは爆発的に人気を得て、日に5万ページビューを稼ぐときもあった。彼が自主制作したDVDは5600部売れて、96,000ドル(1,120万円)をもたらした。「ついに収入を得たんだ」小野氏は述懐する。彼は東芝や東芝EMI、リクルートなどの一流企業から広告でアニメのキャラクターを使いたいと数多くの仕事の依頼を申し込まれている。
映像コンテンツのプロダクション会社DLEは小野氏の二つ目の大きなアニメ作品を制作することを決めた。「秘密結社鷹の爪」である。日本の放送局テレビ朝日は三ヶ月間にわたり作品を放送した。「古墳ギャルのコフィー」と呼ばれるもう一つのシリーズは古墳の形をした体の女子高生の話で、いま東京の二つの映画館で上映されDVDになって販売されている。
小野氏は、彼がFlashで制作したアニメの質は映像面でこの二十年間来のアニメータたちには及ばないことを認める。しかし、彼はすぐさま事態を上向かせる。「私のセールスポイントはすばやい制作なんです」彼は言う。それまで制作に数週間かかっていた30分のアニメを、彼は数日のうちに仕上げることができる。それも、はるかに安く。小野氏は日本の放送局TBSの深夜番組で放送されているショート・アニメ「THE FROGMAN SHOW」を制作するが、そのコストは旧来のアニメ制作の1、2割だけ――そして彼は著作権を得た。
・ワンマン・バンド
キャリア・ブレイクを望むときにも、既存企業との絶え間ないネットワークというやり方は必要ではなくなっている。ネットを使えば、アニメのアーティストは準備が出来次第その作品を展示することができるし、番組プロデューサーや配給者にURLをEメールで知らせることができる――そしてまたあらゆる企業やイベントの主催者たちは製品を売ったり会議やネットでの宣伝で注目を集めたりするためにアニメを使うことに関心を寄せている。「それらの分野でウェブアニメの需要は増してきている」とJAWACOMという産業イベントを日本で主催したアニメのクリエイター、左山誠氏は言う。
(訳注:キャリア・ブレイクcareer break。本業の仕事から離れる期間のこと。これまでは育児をする母親のものとされていたが、いまでは個人的な成長や本業での成長のために仕事を離れて時間を取るために用いられる。以上、Wikipedia英語版より抜粋和訳)
「Flashアニメは日本のマンガやアニメの未来形だ」と多摩美術大学でマンガやアニメの歴史を教える評論家の竹熊健太郎氏は推測する。「一個人が全てを低予算でやれる」そして、それは日本だけでなく自分の作品に対する権利をほどんど持たない日本以外のあらゆる自主制作のアニメータたちに朗報となる。
(訳注:原文では"Kentaro Takemura"となっていましたが、竹熊健太郎氏"Kentaro Takekuma"に修正して訳しました)